長引くコロナ禍で社会問題になりつつある「バーンアウト(燃え尽き症候群)」。
燃え尽き症候群、と聞くと、あしたのジョーみたいな真っ白けで「やりきったぜ・・・」みたいなイメージがありますが、実際には「不完全燃焼」によるメンタルヘルスの低下、というようなことが現在問題になっていることのようです。
2021年6月15日の「編集長が最近思うこと」でもこの問題について取り上げましたが、アマチュアの演奏家の中でもメンタルヘルスの低下という形で問題になりそうだな、もしくはいま苦しんでいる方がいるかもしれないな、と考え、演奏家を中心に数名の方にお考えを聞くために簡易インタビューの依頼を行いました。
人によって考え方も捉え方も違うと思いますので統一された答えが出てくるわけではないと思いますが、何か参考になればいいなあと思います。
今回はクラリネット奏者でアレクサンダー・テクニークを使った講座ほか様々な指導もされている有吉尚子さんにお答えいただきました。
1. コロナ禍が長引き、バーンアウト(燃え尽き症候群)が問題になりつつあります。演奏者としてこの厳しい状況を生き抜く中で、燃え尽きないために、前向きな姿勢を保つために心がけていることはありますか?
◆せっかく今まで積み上げてきたものが崩壊して通用しなくなるような気がしていた時期もありました。
そんなときには仕事とかお金という問題としてではなく自分の人生で大事にしたいことは何なのかを改めて考えていました。
時代が転換しているというのは変わらない事実なので、今までのやり方に固執せずに新しい状況に合う自分に出来ることをやっていこうと思っています。
2. ご自身が指導をされている生徒さん、特に学生など若い方は、精神的に不安定になりやすいと思いますが、指導者としてバーンアウトの問題(例えば生徒さんが燃え尽きそう、または燃え尽きてしまった)に直面することはありますか?またその場合、どのように対応をしていますか?
◆コンサートやコンクールなどの目標としていたイベントが無くなりモチベーションを保てないという相談はたくさん受けました。
新たな目標としてオンラインでの演奏イベントを提案したりはしましたがそれだけではピンと来ない方も多かったです。
今後は演奏機会だけでなく受講者さん同士がオンラインではあってもお互いに交流を持つ機会を増やそうと考えています。
3. 2の質問ともつながってきますが、特に学生の場合、吹奏楽や楽器演奏には何かとお金もかかりますから、保護者などからの支援をありがたく思いつつも、ときにその支援的なつながりが重圧になってしまう場合もあるかと思います。どのように対処したら良いと思われますか?
◆プレッシャーを感じることは一概に悪いことと言い切れないかと思います。
葛藤を抱きつつも手探りで自分の進む道を見つけていくのは時代や状況によらず今までもこれからもあることかなと思います。
4. バーンアウトを防ぐ方法の一つとして、人とつながっている感覚を持つことが大切だと言われています。しかし集まって演奏ができない現状において、つながりの感覚を持つことがコロナ以前より難しくなっているのではないかと感じます。ご自身、つながりの感覚を持つように心がけていることはありますか?また、人とつながっている感覚をうまく持てない方に、アドバイスはありますか?
◆zoomやクラブハウスなど色々人と繋がるための手立てはあるので、何かしら対面のときとは違ってもコミュニケーションをとる方法を模索していく段階なのかなと思います。
使い方もこれからより洗練されてて便利なだけでなく温かみのあるコミュニケーションを取れるようになっていくといいなと思います。
あとは家族など身近な人と過ごす機会は他人と接触するのが難しい分、これからは今までより増えていくのかなと思っています。
5. 従来はあったコンクールなどのイベントの目標が失われてしまい、演奏活動が出来たとしても達成感を得られにくくなっている人もいるかもしれません。目標を作る、達成感を得る、ということに関して、アドバイスがあれば教えて下さい。
◆目標としてワクワク出来るものが見つかるまでは色々トライしてみることが大切なのかなと思います。
私自身もこれからの人生でその時々にワクワクできることを探し続けていきたいと思っています。
6. 最後になりますが、もしバーンアウトしてしまった場合に、その状態から立ち直るために、どのようなことが効果的だと考えますか?
◆まずは休むことを大切にして、焦らずに変わっていく時代についていく方法を探していけたらいいのかなと思います。
有吉さん、ありがとうございました!
うまく自分の中に取り入れられそうな考えがあれば、ぜひその考えを取り入れて、前向きなエネルギーに転化してみてくださいね。
Wind Band Pressでは、2020年にも「コロナ禍を私たちはどう生きたか~未来に残すそれぞれの記憶~」というインタビューの特集を組んでいますので、そちらも参考になるかもしれません。
→コロナ禍を私たちはどう生きたか~未来に残すそれぞれの記憶~のコーナー
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